《MUMEI》
宣伝中
(何か、スッゴい見られてる…)


「ほら、祐也、宣伝中なんだから」


『二年五組・お化け屋敷』と書かれた看板を持った志貴が、俺の顔を覗き込んだ。


「わかってる」


今、俺と志貴はクラスメイトに言われ、校内を歩いてクラスの出し物の宣伝をしている。


(わかってるけど…)


「この格好…」

「可愛いわよ」

「志貴が着ればいいのに」

「文化祭だから」


(何だそれは!)


俺の心の叫びは…


「あ、祐也、やっほー」


メイド服の祐と


「祐也も女装だー!」


セーラー服の厳とすれ違った事で言葉にはならなかった。


(今頃柊、ガッカリしてるかなー)


そんな事を考えていたら…


「あ、田中君、志貴ちゃん」

「祐也!、志貴も」


(気にし過ぎだった)


希先輩は執事服だったが、柊はご機嫌だった。


「希似合う」

「志貴ちゃんもかっこいいよ」


希先輩と志貴は、お互いの姿を見て微笑み合った。


「祐也、可愛い…」

「お前に言われても嬉しくない」


俺は柊を睨んだ。


「そうそう、怖がってもらないと。ね?

…看護婦さん」

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