《MUMEI》
お化け屋敷
俺の衣装は、いわゆるナース服


なのだが、真っ白ではなく、ところどころ赤いインクで汚れていたり、不自然に切れ目が入っていて


『襲われた看護婦風』になっていた。


俺の隣の志貴は、ワイシャツに、わざとゆるめたネクタイ、それに黒いズボン


それから、俺とおなじように加工された白衣に、聴診器を首から下げた


『怪しげな外科医風』になっていた。


俺達のお化け屋敷の舞台は病院で、お化け役は医者・患者で


看護婦が、案内役として、客と一緒に回るシステムになっていた。


「へ〜、面白そう」

「そ、そう、だね」

「じゃあ、クラスまで行きましょう! もちろん祐也が案内役ね」

「あぁ」


(絶対、柊怖がってるな…)


そして…


「ギャー!!」

「柊君?」

「だ、だ…い、ウギャー!」

「あれ、ただの作り物よ」

「わわ、わか…ヒェー!」

(騒ぎすぎだろ)


俺は呆れながら、案内を続けた。


(つーか、最後大丈夫か?)


出口直前のイベントは、普通の客でも悲鳴を上げるものだった。


「…あなた方のお陰で、やっと、出口まで参りました」


俺は、セリフと共に、足を止め、柊と希先輩の前に立った。

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