《MUMEI》

学校、休んだ。



眠れなくて、気持ちが興奮していて、…なによりも修平のいる学校に行きたくなかった。

金谷に会いたくなかった。


普段休まない俺からの電話に担任の永瀬は本当に心配そうに承諾した。



起き上がる事が辛くてベッドに寝そべりながら二枚のカードをじっと見つめる。




けたたましいドアフォンの音。夢の中で響いているのかと思い、少しづつ意識を現実に戻していき。

やっぱり現実に鳴っているのだと理解して俺は起き上がる。


オレンジ色の部屋…。
掛け時計を見ると夕方の5時。

気がついたら眠っていた。
バフッと後ろに倒れ天井を見つめる。


『ピンポン、ピンポン…』

「………は〜…しつこい……」


新聞の勧誘か。もしくは何時もの訪問パン売り。

のんびりと起き上がり窓から真下を覗く。
新聞屋のカブはない、パン屋のバンも止まっていない。


玄関に人影が一つ。それは長く伸び
強く自己主張している。


俺は金谷だと核心しまたベッドへと戻った。



とても奴と話す気分じゃない。


ギ、ギギ……




バタン







「…!」




聞き慣れた玄関の開く音、閉まる音。



そういえば鍵を閉めた覚えがない。



「いるんだろう?」


突然聞こえた声…。



俺は慌てて起き上がり携帯を開いた。


嫌な、予感。酷く嫌な予感。


会いたくもないと強く念じていた金谷に俺は電話をかける。

すぐに繋がった。心臓が煩い。もう…


『勇樹…、昨日は…』
「助け…て…」

声がなかなか出せない。やっと絞りだしてやっと絞りだして。
『勇樹、どうしたんだ!!』

「永瀬が…、家の中に……」



ギギ…

この家は二段目の階段だけ軋む音をたてる。

「階段上がって!金谷、かなや!!」

小さなかすれた声で俺は助けをこう。


永瀬には何度も迫られていて、その度にやんわりとかわしてきてきた。






それは金谷も知っている。
『今行くから!』
「は、早…く…」

部屋に鍵を付けるべきだった。



ガチャ……





「やっぱりいた、
心配で来ちゃった」

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