《MUMEI》

「先輩には、届いてないかもしれないですけど俺は先輩が好きですよ。」



「……好きってどんなかんじ?」

つい、聞いてしまう。


「ふわふわします、そしてたまに痛くなりますね。」


「理屈じゃないんだね。」


「そうなんです。」


「つかぬ事をお聞きしますが、今は?」

安西は真剣に答えてくれるから丁寧になっていた。


「目を閉じてください。」

安西の指が視界を覆う。
鼻に触れる感触……


「……あんざい、今の……」


「多分、キスです。」

多分ってなんだ……!顔が引き攣れて動かせない。


「……あ、あんざいはそんな子じゃないって信じていたのに……!」

知らない俺にこんなことするなんて!
裏切られた気持ちでいっぱいだ。


「好きだから、好かれたいと思います。反面、嫌われてでも自分の手で好きな人を感じたいと思うんです……。俺のエゴかもしれないけれど、先輩のその肌を見る以外で知りたかった。」

安西の言葉一つ一つには妙な説得力がある。
俺にビニール袋を被せた奴もそうだったのだろうか、でも安西のような説得力のカケラも無い粗悪な強引さだった。
そうなると安西がエゴならそいつは行き過ぎたエゴだろう。


「別に、俺なんてふつーの肌だよ……嫌いにならないからそういう俺に無断でなにかしないで。」

身勝手な好きは怖い。


「……先輩は自分にもっと自信を持っていいんですよ。俺も先輩が優しいから調子づいてしまいました。嫌な思いさせてしまいましたね。」


「いいよ、許す。」

ぐちゃぐちゃな俺の気持ちを平らにしてくれたのは安西だったから。

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