《MUMEI》 夜9時を回らない内に、 那加は寝てしまった。 薄暗い病室に、 柔らかな月明りが満ちてくる。 「ひなたぁ‥」 「ぇ」 声がした、 ベッドの方を向く。 那加が、 横になったまま俺を見ていた。 「どうした‥? 怖い夢でも見たのか‥?」 訊いたら、 那加はただ、 小さく頷いた。 「手‥握って」 「──ぁぁ、分かった」 ベッドのすぐ脇に膝を突いて、 那加の手を握ってやる。 「付いててやるから、大丈夫だからな」 前へ |次へ |
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