《MUMEI》
シアタア8
「まーたん、今日は一緒にラジオの公開生放送見に行こうね!」

俺が人込みが嫌いなのを知りながら彼女の莉子は敢えて当日に告げてきた。
逃げられないようにするためだ。


「……まさか、あの塊?」

視線の先には人、人、人。


「今日は映画の宣伝で光が来るの、あとマイマイ。」

莉子はミーハーだ。
昔の洋画が好きな俺はついていけない。


「……ふーん。」


「光カッコイイんだよ!あと、マイマイだって可愛いんだから。」

莉子に強引に手を引かれ、人だかりに並ぶ。



『はーい、今日は皆さんお気づきでしょうが、素敵なゲストをお迎えしております。』

ガラス越しにローカルタレントらしい人が観客を盛り上げる。


『映画、ゆめのつづき より高遠光君とマイマイこと三橋マイちゃんです。』

歓声の中、男女二人が入って来た。


『こんにちは、高遠光君です。』


『マイマイこと三橋マイちゃんです。』

司会の真似をしながら二人は自己紹介する。
高遠光というやつは軽そうなイメージだ。

まあ、芸能界は華やかな印象だもの。さぞや遊んでいらっしゃるのだろう。


「ああ、よく見えない〜」

莉子が前の大きい人に阻まれていたので俺の前へさりげなく寄せる。


「ありがとまーたん、やっぱり光カッコイイ。」

おいおい、彼氏の前でも言っちゃうんだ。
高遠は確かに顔はいい、小綺麗で無駄の無い体に手足は長い方だ。
ただ、なんか軽い印象を持ってしまう。


「マイマイも可愛い〜あのワンピ似合う。」

莉子は爪先立ちながらよく後ろまで見れるものだと感心してしまった。

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