《MUMEI》
ポーカーフェイスになりたい
部屋に入って小一時間、未成年であることを隠していた俺達は(というより俺は)酒を飲みまくっていた。
「お前飲みすぎじゃね?」寺田が覗き込むようにして俺を見た。だが顔は心配している様子は微塵もない。「いいじゃん!それよりさぁ…」
寺田とその隣にいた女はもうデキたのだろう。さっきからずっとイチャついている。

さすが尻軽コンビだな…。
寺田達を眺めつつ、どうしても視界に入ってくる竜崎の様子を伺っていた。
本当はそっちの方が気になっていた。

「竜崎君、まつげなが〜い!可愛い〜。」
猫撫で声の寒気立つ言い方で、女がベタついているのが見えた。

そんなに引っ付くなよ!竜崎も困ってんだろ!!

俺は無意識に苛立っていた。

「ありがと。でもミキちゃんには敵わないなぁ。」
「やだぁ!嬉しいっ!」

竜崎の奴〜!少しは迷惑がれよ!

俺の苛立ちは爆発寸前まできていた。気を落ち着かせる為、まだジョッキ半分は残っているビールを一気に飲み干した。
だが次の瞬間、トドメの一発が女の口から発せられた。

「竜崎君って好きな人いる?」
竜崎の耳元で囁くそぶりをみせていたが丸聞こえだ。
一瞬身体がヒヤリとした。竜崎とバッチリ目があったのだ。いつもなら直ぐに反らすのだが、こればかりは反らせずにいた。
数秒後…先に反らしたのは竜崎の方だった。

「…いないよ。」
口元をニヤっとさせたのが俺の気に障った。

もう我慢ならねぇ!寺田はともかく、竜崎までこんな女達に落ちるとは…

俺は勢いよく立ち上がると、苛立つ気持ちがバレないように平然を装った。
「悪い!俺帰るわ!」
「何だよ急に。まだ来たばっかじゃん!」
寺田は焦った様子だったがもうそんな事は関係ない。俺の手はもうドアノブに掛かっていた。
「ちょっと用事思い出したから…」
「用事って?」
ドア近くにいた竜崎が聞いてきた。まだ女がベタついている。
それにまた腹が立って…
「お前には関係ないだろ」つい冷たくあしらってしまった。
「まぁね。」
クスリと笑う竜崎の顔が追い撃ちとなり、思いっきりドアを閉めた。

―バタン!!!―

俺、全然怒り隠しきれてねぇし…

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