《MUMEI》 診察台れおんの顔が赤いのはワインのせいだけか。 「明日ですか?」 「お願いします」 頭を下げられると弱い。 賢吾が真顔で言った。 「それにお嬢。指圧ゆうても、私服の上からではないよ」 賢吾の言葉にれおんはドキッとした。 「え、どういう格好でいればいいですか?」 れおんは、もりやすに直接聞いた。 「シャワー浴びて、バスタオル一枚でいてください」 あっさり言った。 「ちょっと待ってください」 「ええやないか」 「良くないですよ、バスタオル一枚は恥ずかしいですよう」 口を尖らせるれおんに、賢吾が言った。 「お嬢は人のために、ひと肌脱ごうとは思わんのか。旅の恥はかき捨てゆうやないか!」 「旅じゃないでしょう!」れおんもむきになる。 「自分探しの旅やないか」 「そんなことでは誤魔化されません!」 れおんはワインを飲みほした。 「ええやん」 「絶対イヤです」 翌日の夕方。 仕事を終えて、れおんは和室でナース服を脱いだ。 「ふう」 下着も取り、バスタオルを体に巻くと、シャワールームに入った。 途中もりやすに見られるのも恥ずかしいが、賢吾にこういう格好を見せるのは、何か照れる。 それでもれおんは諦めてシャワーを浴びた。 髪と体を拭き、白いバスタオルを巻くと、スリッパを履いた。 賢吾が和室の前にいた。れおんを見る。 「おおお!」 「何も言わないでください。誉めてもセクハラですよ」 れおんの速攻に賢吾は黙った。 「わかった言わん。それよりお嬢。和室に用意しといたで」 「え?」 れおんは部屋の中を見た。なぜか布団が敷いてある。 「何布団出してるんですか?」 「ここでマッサージしたらええ」 れおんは想像した。 和室に布団を敷き、そこにバスタオル一枚で寝て、マッサージをされる。 危険だ。 「こっちのほうがいいですよう」 れおんは診察台を触った。 「お嬢。診察台のほうがマニアックやろ?」 「もう、喋んなくていいです」 ピンポーン。 「嘘、来ちゃった」 途中もりやすが入ってきた。 「こんばんは」 「こんばんは」 れおんは顔を赤くしながら言った。 「恥ずかしい。この格好でいいですか?」 「いいよ。じゃあ、うつ伏せに寝て」 「はい」 れおんはスリッパを脱ぐと、診察台に上がった。うつ伏せに寝て枕を抱く。 (クールイケメン!) 彼女は少し不満だった。バスタオル一枚は凄く勇気がいて恥ずかしい格好なのに、途中もりやすは顔色一つ変えない。 女の裸を見慣れているのだろうか。 もりやすは腰を軽く指圧する。れおんはうっとりした。 「上手ですね」 「気持ちいいですか?」 「はい」 賢吾は待合室にいる。だれかと携帯電話で話をしていた。 「何やそれ。それはアカンよ。わかった、すぐ行く」 「え?」 れおんは耳を疑った。賢吾が診察室のドアを開ける。 「お嬢、もりやす君。1時間くらい出掛けてくる」 「ちょっと待ってください院長!」 「行ってらっしゃい」 二人は同時に言った。れおんは唇を噛んだ。 バスタオル一枚でもりやすと診察室で二人きり。 (怖いじゃん) もりやすは手にローションをつけると、れおんの脚を丁寧にマッサージした。 (嘘、気持ちいい!) これはたまらない。本当に新人なのか。それとも店がハイレベルなのか。 「れおんチャン」 「はい」 「仰向けになって」 「はい」 仰向けはさらに危険度が増す。れおんは賢吾を信じるしかなかった。 院長が危ない男と自分を二人きりにするわけがない。そう信じた。 もりやすは、れおんの膝を攻める。 (あああ、力入んない。気持ちいい!) もりやすは、いきなり言った。 「バスタオル。そろそろ取ってもいい?」 「え?」 れおんは焦った。両手でタオルを掴む。 「全裸は恥ずかしいですよう」 「お店では女のお客さんもみんな全裸ですよ」 「ほかの人は知りません」 れおんはキッパリ断った。 前へ |次へ |
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