《MUMEI》
愛は会社を救う(68)
「この派遣クン、少しは見所がありそうね」
やや顎を上げて首を傾げ、こちらを見下ろす。
切れ長の目が、曇り一つ無いレンズの奥で冷たい光を放つ。
「光栄です」
こちらは薄笑いを浮かべながら、冷静に相手の出方を探っていた。
仁美も僅かに左の口角を上げて、これに応じる。
最初に見た、あのサディスティックな微笑だ。
そしてゆっくりと歩み寄り、座っている私のすぐ脇に立ち止まると、静かに作業机の縁に腰を掛けた。
小振りだが弾力のありそうなヒップが、木製の甲板を押し返している。
さらに、伸びやかな左脚を床に着けたまま、見せつける様に右脚を組んでいく。
タイトスカートの生地と太腿の皮膚とが擦れ合う乾いた音が、男の耳を心地良くくすぐる。
「あなた何者?一体ここで何してるの?」
感情を殺しつつも、威圧感たっぷりの口調で尋問が始まった。
しかし私はそこに、自ら出向いて来た女王の"焦り"をはっきりと見抜いていた。

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