《MUMEI》
楽。でも辛い
あたしは小さい時から太っていた。
そりゃあもう並じゃない太り方をしていた。
しかも背まで高いもんだから地元ではちょっとした有名人だった。
しょうがないというかやっぱりというか当然のように学校でいじめられた。
『デブ』
知ってるし。
『汚い』
お前のが汚ねーよ。
『消えろ』
できるならとっくに消えてるし。
あたしはいじめられたからってメソメソ泣いたりするタイプではなかった。とにかく考えないように趣味に没頭した。
変な事が耳に入らないように友達も作らなかった。
自分から火の中に飛び込むようなことをしなければ辛くない。
そう思っていた。
中学校に入った頃あたしはビジュアルバンドにハマった。
ビジュアルバンドのファンをやっている子なら知ってると思うがバンドのファンの中では『バンドネーム』と言う偽名を使って交流することが多い。
あたしも自分で『バンドネーム』を付けていた。何故がバンドネームを使うと自然と人と話せた。自分を偽る事で引っ込み思案な自分を隠すことができた。
同じ趣味で本当のあたしを知らない子達といるのがすごく楽しくて楽だった。
自然と中学校に行かなくなり家にも帰らずバンド友達とつるんでいた。
高校も行きたくなかったけど親に無理矢理女子校に入れられた。男がいないからまだ大丈夫だろうと思ったんだろう。
そもそも人付き合いがうまくできないんだから女子校だろうが共学だろうがあたしには変わらなかった。
高校時代もほとんどバンド友達と遊んでいた。
意味のない三年間も無事終わり、バイトをする度胸もないあたしは卒業後何もせず毎日ダラダラ過ごしていた。
さすがに働かなきゃなと思いバンド友達に相談したら
『あたし風俗やってるよ〜。客商売だけど一人仕事だし金いいしやってみれば?』
風俗か‥援助交際はしたことあるしその延長だと思えばいいかな、と思い早速風俗求人誌を購入した。
自分みたいなデブでも雇ってもらえるのかなーって考えながら雑誌をペラペラめくってみたら衝撃的なものを目にした。
『デブ専ヘルス』
あたしは迷いもなくすぐに電話をした。
丁寧な電話対応でほっとした。さっそく明日面接に来て下さいと言われあたしは不安と期待で胸がいっぱいになった。
つづく
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