《MUMEI》
拷問ルーム
マキは待ってくれない。悪魔の笑顔でボタンを操作する。
「ちょっと待ってマキちゃん!」
マジックハンドがれおんの全身を洗いまくる。
「ぎゃあああ、やははははは、くすぐったいやめて!」
真っ赤な顔でお願いしているのに、マキは面白がってやめてくれない。
「クックック。いじめちゃおう、こいつ」
首、脇、胸、おなか、腰、脚をくまなく洗う。
「やめてお願い、お願いだから」
かなり苦しそう。マキは一旦止めた。
れおんは荒い息を整えると、マキに言った。
「ほどいて」
「まだいちばん大切なところを洗ってないじゃーん」
れおんは身じろぎした。
「ほどいてから洗って。抵抗しないから」
「やだね」
果たしてこんなことが許されるのか。れおんの法律知識では判断できないが、やり過ぎのような気がした。
「マキちゃん、くすぐりは苦しいだけだから。絶対やめて」
しかしマキは笑う。
「くすぐりなんかしてないよ。全身洗ったらお姉さんが苦しそうだから、やめてあげたんじゃん」
れおんは唇を噛んだ。無抵抗だと弱い。それに姫君からお姉さんに格下げになっているのが怖い。
「キレイなお姉さん。お尻とあそこを洗ってあげます」
れおんは唇を結んだ。全身に力を入れる。
マキがボタンを操作すると、真下からシャワーがデリケートゾーンに直撃した。
ボディソープも襲いかかる。
「……」
れおんはマジックハンドが来るかと身構えたが、シャワーだけだ。
マキは悪魔の笑みでれおんの様子をうかがっている。
何か隠し玉でもあるのか。
2分、3分と経過してもシャワーだけだ。マキはなぜか笑っている。
(あれ?)
シャワーを3分、4分と敏感なところにかけられて、妙な気持ちになってきてしまった。
「止めて」
れおんは弱気な顔でマキを見た。
「止めないよん」
れおんは唇を噛む。シャワー攻撃から逃れようと腰を動かすが、シャワーも動く。
「ちょっと!」
さすがにれおんは頭に来たが、強気には出れない。
「どうしたの。もじもじして。高貴なお姫様が、腰をくねくねしたらダメでしょう」
れおんは我慢できずに怒鳴った。
「ちょっといい加減にしなさいよ!」
「はあ?」
いきなりマキは凄んだ。
「何その態度。お仕置きだよ」
レバーを引く。マジックハンドが四方八方から飛び出してれおんの全身を洗いまくる。
「悔しい!」
れおんは歯を食いしばって耐えた。笑うのも哀願するのも屈辱だ。
「悔しい!」
無理だ。くすぐったい。こればかりはどうにもならない。
「きゃははは、やめて、わかったから!」
「わかった?」
「わかったから!」
「よし」
止めてくれた。れおんは自分に言い聞かせた。これはお遊びだ。ゲームだ。負けたわけではない。
マキがタオルで優しく体を拭く。
「キレてます?」
「キレてないよ、大丈夫」れおんは即答した。
「キレたらこっちも逆ギレするよ」
「ダメよ」
ようやく手足をほどいてくれた。れおんは思った。店を出るまでは逆らわないほうが身のためだ。
シャワールームにはほど遠い拷問ルームを出ると、部屋に戻った。
「では、ベッドでお待ちください。店長ともりやすさんが来ます」
マキはおとなしい普通の店員に戻り、一礼すると部屋を出ていった。
「ふう」
れおんはベッドに腰をかけ、広い部屋を見渡した。
考えてみれば料金を払っていないのだ。シャワールームでも実験台にされたのかもしれない。
「明日院長を詰問しなきゃ」
ドアが開いた。町田店長ともりやすが入って来る。
れおんは立ち上がった。
「いいのよ。ベッドにうつ伏せに寝て」
「あ、はい」
れおんはバスタオルを巻いたまま、うつ伏せに寝た。
「少し話しましょう。れおんさん」
「はい」
もりやすは無言で立っている。町田唯は両手でバスタオルを取ると、静かに下げた。
「ちょっと…」
「大丈夫よ。お尻は掛けたままにしてあげるから」

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