《MUMEI》 準備中「じゃあ、俺はそろそろ行くから」 「うん、また後でね」 志貴とは、三年二組の前で別れた。 クラス委員である志貴は、クラスの様子を確認し、部室で着替えてから体育館に来る事になっていた。 (さて、着替えるか) 誰もいない体育館に着き、俺はある一室に入った。 ここは、本来は用具入れなのだが、今日だけは俺専用の更衣室になっていた。 ちなみに、他の出演者達は男性は空き教室・女性は部室で着替える事になっていた。 (そろそろ来るな) 俺がそう思った時、入口がノックされた。 ガチャ 「…特訓の成果、出てるわね」 完璧に着付けを終えた俺を見て、メイク係の先輩が感心していた。 「どうも」 俺は苦笑し、先輩を中に招き入れた。 今の俺の衣装は一番時間がかかる振袖だった。 ちなみに他の衣装は、ステージ脇で着替える事になっていた。 そして、俺は先輩によってバッチリメイクを施され ロングヘアのウィッグと 黒いカラーコンタクトを付けた。 「じゃ、行きましょう」 「はい」 足袋と草履を履いて、俺は立ち上がった。 前へ |次へ |
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