《MUMEI》

初めてだった。





そんな言葉をかけてくれた人は。





先生は、真剣に私の話を聞いてくれて、それから──私の肩に手を置いて、ニッコリ笑った。





『兎みたいやな、卯月て』

『‥うさぎ‥?』





うさぎ。





先生は、私をうさぎみたいだって言った。





たぶん──泣き過ぎて赤く腫れた目が、うさぎに似ていたからだと思う。





『オレ──今日転任して来てん。眞野宵夜や。宜しゅうな』

『眞野‥宵夜──‥』





名前とは対照的な、日溜みたいな笑顔。





眩しくて、あったかくて──‥。





その瞬間‥私は先生を好きになっていた。

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