《MUMEI》 祐視点「雅樹、食ってるか?」 「うん、うまいよ祐」 「よし! 食い終わったら祐也の劇見に行くからな!」 「祐はいいのか?」 「これだけもらう!」 俺はテーブルにある肉まんを一つ取ってかじりついた。 (うん、上出来) 我ながら、美味い。 俺の所属する料理部は、去年と同じ『点心喫茶』だった。 ちなみに、俺は今チャイナ服を着て、女装している。 (面倒だから、このまま行こう) 今年は高校最後の文化祭。 俺が卒業後行くのは、秀さんが昔卒業した専門学校。 一年間の間に資格をとるから、みっちり勉強しなければならない。 文化祭も一応あるが、一日だけで、制作発表会のようなものらしい。 つまり バカ出来るのも、今だけだ。 そして 雅樹と毎日イチャイチャ出来るのも、今だけだ。 (祐也はよく遠恋耐えてるよな) 祐也の恋人は年上の社会人。 普通は不安になるのだろうが、祐也は至って普通だった。 (まぁ、忍さんは祐也を溺愛してるからな) 俺は、一度だけ二人の濡れ場に遭遇した時の 俺を殺しそうな忍さんの目が、忘れられなかった。 前へ |次へ |
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