《MUMEI》
葛西雅樹視点
「やっぱり寒いんじゃないか?」


俺は、目の前にいる女装した恋人


チャイナ服の祐を見つめた。


「いや、ちょっと思い出して鳥肌立っただけ」

「何を?」

「行こう、いい場所とれなくなる」


(逃げたな)


普通はこういう時は追求するのだろう。


しかし、俺は


「そうだな」


立ち上がり、会計を済ませた。


俺は、卒業後、葉月さんの弟子として、葉月さんと一緒に行動する。


葉月さんの活動拠点は地元の北海道と東京だ。


そして、それ以外にも日本全国


時には海外に行く事もある。


(せっかく祐が俺だけを選んでくれたのに…)


卒業したら、あまり会えなくなる。


『独立したら、自分の時間も取れるし、落ち着けるよ』


そう葉月さんは言ってくれたが


きっと、それまで、何年もかかるだろう。


『応援する』

『待ってる』


そう言ってくれた、祐。


俺の一番大切な人。


だから、一緒にいる時は


ー今だけは。


うんと、甘やかしてやりたい。


「楽しみだな、祐也の女装!」

「…ま、まぁ、そうだな」


…できるだけ

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