《MUMEI》
愛は会社を救う(70)
「あなた、青地と寝たの?」
「ええ」
核心を突く質問にも、即答で返してみせる。
だが仁美も、ここは表情を変えずに畳み掛けた。
「知ってるみたいね、青地と私との事」
「もちろんです」
今度は感情を逆撫でされ、覚えず歯噛みしたのがわかる。
プライドを傷つけられた女王は、しばらく私の顔を睨みつけた後、ふいと横を向いて目線をそらせた。
余分な脂肪の全く無い、引き締まった頬。それが今、この女の感じている哀しみや怒りを如実に物語っているように思えた。
「青地知子は私の所有物。それをあなたは、男のやり方で穢した」
抑揚の無い口調でそう言うと、再びこちらに顔を向ける。その瞳の奥には、蒼白い嫉妬の炎が燃え盛っていた。
「いいわ。私もあなたに同じ事をしてあげる」
「同じ事?」
それが何を意味するかは、わかっていた。
しかし、不思議と平常心は保たれ続けている。
むしろ胸に去来したのは、どこか諦めにも似た、空疎な感情だけだった。

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