《MUMEI》
仮眠室
「よし、では出発までしばらく仮眠をとるといい。部屋を用意させよう」

隊長は言って近くにいた部下の一人に指示を出す。
羽田と凜はその隊員に連れられ移動した。
薄暗い廊下を歩きながら羽田は「なんでこんな暗いんですか?」と疑問に思っていたことを聞いてみる。

「ああ、これですか。マボロシの中には光に向かってくるものが多いんですよ。だからできるだけ最低限の明かりしか使わないようにしてるんです」

「はあ、そうなんですか」

「それに今の状況では供給される電力は限られているので、できるだけ電力は避難所に送るようにしてるんです」

「なるほど」

羽田は納得して頷いた。

「この部屋を使ってください」

そう言って案内されたのは小さな部屋だった。
隊員の仮眠室となっているのだろうか、室内には二段ベッドが二つ左右に置かれてあった。

「時間になったら呼びにきますので」

隊員はそう言って軽く頭を下げると廊下を引き返して行った。

「……なんか、大変ですね」

ベッドの下の段に腰掛けながら凜は言った。

「そんな他人事みたいに言わないでよ、津山さん」

羽田はため息をつきながら向かいのベッドに腰掛ける。

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