《MUMEI》

「それで告れなかったんだ‥」

佐原は、

俯いて言った。

「手紙とか、書かなかったの?」

「住所も分からなかったからな──」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「千代子‥?」

「まだ好き?」

「ぇ」

「その人の事‥」

「言ったろ? お前がいるから幸せだって」

「───────」

「やっぱり今から教会行くか?」

「ううん、まだいいよ」

「そうか‥?」

「うん、まだ指輪もはまんないし」

「──なぁ」

「?」

「卒業したら結婚、っていうのは駄目か?」

「ハイっ!?」

千代子は、

かなり驚いたみたいだった。

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