《MUMEI》

千代子は、

俺に姫抱きにされたまま黙りこくっている。

「千代子」

「ぇ」

「嫌か?」

「別に‥」

俺とは目を合わせないように顔を背けて、

千代子は溜め息をついた。

「シロってば‥、ぅわ‥!?」

「これでオルガンなんか聞こえたら雰囲気満点なんだけどな──」

「はい‥!?」

「まぁ、これでもいいか」

「いいんだ‥。てかまだお姫様抱っこ続行すんの?」

「楽しいしさ」

「あたしは心臓ヤバいんですけど‥」

「大丈夫だって」

「〜〜〜〜〜〜‥」

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