《MUMEI》

「なにー?どっか連れてってくれるの?」


「あんま喋るな。気付かれる。」

咄嗟に手を引いてしまったがすぐに離してやる。


「大丈夫、大丈夫。眼鏡あるし。」

眼鏡を装着し始めたが、あまり俺には違いは解らない。


「ゲーノージンのくせして堂々としすぎ……」

この間の見たまんまだ。
一つ気付いたのは間近だと、一般人とは別のオーラがあるということ。


「何もやましいことしてないからね。」

含みのある言い方だった。


「……頭、大丈夫か?」

このゲーノージンに、怪我が無いか不安になった。


「それ俺がイっちゃってるってこと?」


「違っ……!」

言うタイミングがズレていたようだ。


「あはは、焦ってる〜。カッコつけてるよりも今の方がいいよ。どう……?予定空いてたらこのままこの高遠光と遊んじゃう?」

これは、誘ってるのか?
自然な笑顔に不覚にもくらっとした俺がいた、倒錯だと頭に言い聞かせる。


「場所による。」


「ついておいでよ、奢ってあげる。」

口許から笑みを零しながら人差し指を動かし、俺を呼ぶ。

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