《MUMEI》

ボールを確保した恭介は、


翔太にパスを出し、


翔太はゆっくりとパスを回しセンターラインを越える。


「え…?」


秀皇大学のディフェンスを見たクロが思わず声を出す。


(…何で?)


それまで1枚目を守っていた三島が、


2枚目を守っている。


そして三島の代わりに1枚目を守っている選手は、


(このおでぶちゃんかよ…)


クロが疑問に思っていた太ったポストだった。


(…何のメリットがあんだよ?)


通常、


ガタイのいい選手は密集地帯の2枚目や3枚目を守る。


今までもクロはこのようなシチュエーションを経験したことがあったが、


秀皇大学がこの形のディフェンスを取る意味がわからなかった。


スピードが武器のクロにとって、


太っている選手はカモだった。


さらに三島は、


背も低くおせじにもいいガタイと言えるような選手ではなかった。


密集地帯に三島を置くということは、


ヤマトの1対1に対応しなければならないということだ。


(おいおい…
ケガしても知らね〜ぞ…)


2枚目を守る三島を見たヤマトも、


このミスマッチの意味を理解することはできなかった。


しかし、


このミスマッチのディフェンスが、


後に大きな事件を引き起こすことになる…

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