《MUMEI》 一友人として「大丈夫か、木下。」 安西と入れ代わりで東屋がやってきた。 「うん。」 休んだ気はしないけど……。 「……うん、そうか。」 東屋が何か言いかけて止めた。 「どうした?」 「んー……言おうか迷ったんだけど、木下って損してるよな。」 東屋がなにかに憂いたのか小さく溜息をついた。 「ん?損?」 「美貌で。」 真面目にそんなこと言うものだから吹き出してしまう。 「笑い事じゃない、木下はなんか……妙な色っぽさがあるから誰か変な気を起こすかもしれない。」 東屋の真面目さがやたらと面白く映る。 「東屋とか?」 つい、ふざけて言ってしまった。 「人の親切を……! ……そうか、分かった、危機感だな?」 東屋がそう言いながらベッドの上に乗って俺を跨いだ。 「東屋?やけに積極的だけれども……」 東屋だと何故かギャグに見えてしまう。 「……今の木下ならこのまま押し倒されても文句は言えないよ……安西とつきあっている? そうだとしたら、少し手の届かないところに行ったみたいだ。」 「言ってる意味がよく分からない……俺は俺だよ。」 安西を上げる意味も分からない。 「嘘……!」 それはこっちの台詞だ。 「……ムッ!」 東屋が突然、唇を重ねてきた。 安西のときで少し抗体が作られたのか、昨日の襲われた恐怖感は軽減している。 だが、誰かに助けて欲しいのは事実。 東屋、鍛え始めたと言ってたが想像以上に力強い……! 「ン、ン……ン――――!」 窒息死するくらいの長い間……東屋、俺と同じくらいの恋愛スキルだったのに、いつの間にか先を越されていた……なんか負けた気がする! 「……不潔。」 カーテンの隙間から乙矢の顔が浮かんでいた。 「……お、おちょや……」 舌ったらずな発音をしてしまい恥ずかしい。 「美作……これは実戦に基づいた授業でだな……」 弁明に困っている、授業ってなんだよ。 実戦に基づいた授業とやらで濃い接吻をするのか? なんだか腹立たしい。 「実戦ね……」 乙矢は人差し指を顎に置いてしばし考えてから、東屋の首根っこを引っ張る。 前へ |次へ |
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