《MUMEI》
欲望
れおんは警戒して、店長から目を離さない。唯は余裕の笑みを見せると、裸の胸を触った。
「あっ…」
「いい体してるわね」
れおんは返答に困り、謙遜した。
「でも胸小さいし」
「大きいからいいとは限らないわよ」
町田唯の魔法の指は、下へと下りていく。
「あっ…ちょっと」
おなかをソフトタッチしただけで快感に息が荒くなる。
もはや魔法の指というよりは凶器の手だ。
「れおんチャンは、エッチな動画とか見る?」
「いえ、見たことありません」
「そう」
町田唯の手は下腹部をさする。
「店長」
「気持ちいい?」
「手加減するって約束ですよね」
唯は笑った。
「そうだったわね」
それでも胸とおなかを中心に円を描きながらソフトタッチで攻める。れおんは困った。
「れおんチャン。動画やAVでは、拷問エステの類は結構あるけど、実際のエステやマッサージ店で、拷問エステを体感できる店は、たぶんないでしょう」
拷問エステと聞いて体感したいと思う女性なんかいないだろう。れおんはそう思い、店長に聞いた。
「拷問エステって、何ですか?」
「そうね。ここがまじめなマッサージ店だと思って来店した女の子が、今のれおんチャンみたいに手足拘束されちゃうのよね」
れおんはドキッとした。町田店長は怪しい笑みを浮かべながら話す。
「で、無抵抗なのをいいことに、エステティシャンが数人がかりで性感マッサージしてとことんいじめちゃうの」
「そんなことしちゃダメですよ」
れおんは本気で言った。しかし唯はれおんの内股をソフトタッチで攻める。
「嘘…」
思わず腰が浮いてしまう。れおんは焦った。
「エステティシャンにメロメロにされちゃうなんて、悔しいでしょ?」
「でも、拷問エステコースなんて聞いたら、普通はみんな引くんじゃないんですか?」
「れおんチャン若いわね」
唯は両手でれおんの下腹部と胸と内股を攻めまくる。
「店長、ちょっと待ってもらえますか?」
しかし唯はやめない。れおんの息づかいが荒くなっていく。
「れおんチャン。たとえばこの状態で、もりやす君にバトンタッチされたらどうする?」
「そんなことしちゃダメです」
「ドキドキしない?」
「しません」
れおんはムッとした。しかし唯は氷の微笑。
「もりやす君に裸を見られるだけでも恥ずかしいのに、敏感なところ攻められて、陥落しちゃいそうになったら、それこそスリル満点でしょう」
れおんは深呼吸。これはもう言うしかないと腹を決めた。
「恋人でもないもりやす君に屈服するわけにはいかない。日常では体験できないスリルを味わえるわ」
れおんは反論した。
「もりやすさんをそういうことに使うのは反対です」
唯は表情を硬くした。
「どうして?」
「どうしてって、旦那さんや彼氏がいたら浮気じゃないですかあ。浮気の手伝いをするんですか?」
唯は純真な剣で切られたような気分になった。
「モラルは大事よ。でもねれおんチャン。人間には欲望というものがあるのよ。これを無理に押さえたら暴れ出す。だからたまに満たされることが必要なのよ」
「それはわかりますけど…」
言いかけたれおんの言葉を遮り、唯店長は言った。
「まさかスポーツで汗を流せば、何て言わないでしょうね」
「でも、浮気はダメですよ」
「それはあなたが、本当の快感を知らないから、かもしれないわね」
「え?」
唯は、れおんのおなかのツボを攻めた。
「あっ…」
「気持ちいい?」
「店長、一旦ほどいてください」
「生意気」
いちばん敏感なところを攻めた。
「あん、ちょっと待って、何するの?」
「れおんチャン。手足拘束されてると言い訳が成り立つのよ。落とされても、抵抗できなかったから、仕方なかったって言えるでしょ」
れおんは首をかしげた。
「店長。感覚ズレてませんか?」
「え?」唯の笑顔が引きつる。
「マッサージの邪道ではないんですか?」

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