《MUMEI》
自由人
「ほんとの自分のつくりかた、知りたいか?」
多田はエリナの頭をポンポン叩いた。
エリナは子供のように頷いた。
本当は昔から気付いていたのかもしれない。
トモダチだと言いながら、学校以外で遊びに誘われたことは一度もない。
学校だけの付き合い。
上辺だけの付き合い。
そんな中、唯一、アンナだけがしつこいまでに遊びに誘い、メールを送ってきていたことをいまさらながらに思い出す。
そのアンナが悩んでいるのにも全く気付かなかった。
彼女にとってあたしは何なのだろう。
「ほんとの自分なんて、この世の中の誰も知らない。
今まで他人に合わせて演技してきたあんたも、ほんとのあんたの一部。
それを全部受け入れて一つの自分にすることがまず第一歩だ。
あとは思ったことを全部ぶちまけたらいい。
さっきも言ったけど、別に全員と仲良くなる必要なんてないんだからさ。
俺は、二日前、すげえ傷つくことあんたに言われたけど、今、こうして普通に話してる。
ひどいこと言っても、言われても自然と傍にいる、そんな相手が友達だ。
そして、その内、少しずつほんとの自分ってもんが分かってくる。
相手が教えてくれることもあるしな」
「将来の夢とかも見つかるかな?」
エリナが聞くと、多田は笑って頷いた。
「ちなみに俺の夢は自由人だ」
自由人。よくわからないが、あっけらかんとした多田にはピッタリに思える。
そうエリナが言うと、多田は大笑いして「だろ?」と答えた。
多田と一緒にエリナも笑った。
自然に笑えたのもずいぶん久しぶりだった。
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