《MUMEI》 坂井 結香視点今日はいよいよ劇の本番だ。 私は舞台チェックに余念が無かった。 (私の台本が、書いた物が実際に劇になる) これほど嬉しい事は無かった。 (まぁ、現実は台本なんかと比べ物にならないほどいろいろあるけど) 私はクールな性格の男性が好きだ。 加えて、私は面食いだった。 (資料を見た時は頼君が理想だと思ったのよね) 田中先輩にセクハラしているのを見て、すぐに冷めてしまったが。 (それで、好きになったのは、アレだし) 私の視線の先には 頑固で熱くて平凡顔の保がいた。 頑固なのは自分の考えがしっかりしているからで 熱いのは、それだけ真剣だからで (あれは、反則よね) 平凡に見えたその目はまっすぐに私を見るし 笑顔が、…綺麗だった。 (男の人なのに) 綺麗だと思ったのは初めてだった。 そうして、私の理想とかけ離れた保は 夏休みが終わる頃 私の初めての彼氏になっていた。 「何ボーッとしてんだ? 結香」 「ううん、何でもない。それより、準備大丈夫?」 「おう!」 保は綺麗な笑顔を私に向けた。 前へ |次へ |
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