《MUMEI》
コール
「いっとくけど、俺たちは鬼だぜ?カウントされない」
「へー、そうかい?けど、そっちのお姉さんは正直だ」
隣を見るとユキナが青い顔で僅かに震えていた。

 今までにない危機的状況だ。
仕方ないといえば、仕方ない。

「こいつは、調子が悪いだけさ」
「これはまた、苦しい言い訳で」
高下はフッと笑った。
たしかに、我ながら苦しい言い訳だと思う。

「で?誰だ?」
高下がメンバーを振り向く。
すると、中の一人が手を上げた。
「獲物は二人だ。その次の奴」
さらに一人手を上げた。今度は少女。
「よし、前へ」

二人の少年、少女はユウゴたちの前へ立った。
「囲め」
高下の号令に、他のメンバーが輪を狭める。
これで相手の逃げ場を制限するのだろう。

「武器はこれを使え」
そう言って、高下が二人に投げたのは斧と鉈。
飛び道具では仲間を傷つける可能性があるからだろう。
二人はそれを手に持ち、構えた。
「コール開始」
高下が合図すると、例の殺せコールが始まった。

さあ、いよいよまずい感じだ。

 ユウゴは真っ白になりつつある頭で必死に考えた。

何か、何か助かる道はないか。

しかし、焦りばかりが募ってろくな考えが浮かばない。

ユキナの方はさらにひどい状態だ。
その様子からもう完全に恐怖に飲まれてしまっているのがわかる。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫