《MUMEI》

──夕食の時間。





いつも通り、

佳代子さんがワゴンを押して、

病室に入って来た。






「──さぁ、どうぞ」

「‥‥‥‥‥‥‥」





那加は、

献立を見て固まっている。





「これ‥食べていいの?」





那加が示したのは、

デザートのケーキ。





苺のムースケーキだった。





「スポンジケーキよりは消化はスムーズにいきそうだから。──それに那加ちゃん、ちょっとづつ快方に向かってきてるもの」

「快方‥?」

「ええ。だから元通りの食事が出来るようになるのも──そんなに先の事じゃないかもね」

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