《MUMEI》

「ほんとっ?」

「ええ、本当よ」





佳代子さんの返事を聞くなり、

那加は目を輝かせた。





「聞いた日向っ? 今の聞いた?」

「ぁぁ、聞いた」





那加の嬉しそうな声に、

思わず笑みが零れる。





「‥あれ、那加──デザートから先に食べるのか‥?」





訊いたら、

那加はニッコリ笑って──





「だってケーキなんて5年振りなんだもん」





そう答えた。





一口切り取って、

口に入れる。





その途端那加が見せた、

とろけそうな笑顔。





「幸せ──」

「お腹‥大丈夫か?」

「うんっ、平気」

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