《MUMEI》 知らない世界マキはいきなり招き猫のような格好をした。 「ニャオーン」 怖過ぎる。れおんは無駄と知っていても手足に力を入れてベルトを外そうとした。 「ニャオン、ニャオーン!」 走り込んで来てベッドに飛び乗る。 「キャア!」 全裸で無抵抗のれおんを見下ろして、マキの目が輝いた。 「さっきはよくもやってくれたわね」 「マキちゃん助けて」 「お黙り、れおん」 呼び捨てにすると、両手でくすぐる真似をした。 「マキちゃん、あたし店長に拷問されてるの。助けて」 マキは焦った。 「何で拷問されてるの?」 「意見聞きたいって言うから率直に言ったらキレちゃって」 マキは手を合わせた。 「ご愁傷様」 「お願い、ほどいて」 「それはできないよ」 マキは心配してドアを見る。 「じゃあ、マキちゃんここにいて」 「それも無理。店長が来たら元の仕事に戻らなきゃ」 「でも、このままだとあたし…」 「店長に本気で攻められたらイッちゃうよ」 「冗談じゃないそんなの!」 「謝ったら許してくれるよ」 「イヤよ、悪いことしてないのに謝るなんて」 「これだよ」 マキは両手で呆れたポーズ。 店長が戻ってきた。マキが部屋を出て行こうとすると、れおんが叫んだ。 「マキちゃんいて!」 マキは驚いた顔で立ち止まり、店長を見た。 「いいわよいて」 そう言うと唯は、優雅な身のこなしでベッドまで歩いた。 「さっきは電話に救われたわね。昇天寸前だったでしょ?」 れおんは赤面した。 「そんなことありません」 店長の手が下腹部をソフトタッチ。れおんは怯んだ。正直秘部を攻められたら勝ち目はない。 「れおんチャン。意見、撤回する気になった?」 れおんは唯を睨む。 「あたしの質問にまだ答えていません。いけない主婦がもりやすさんに恋をしてしまったら、店長は責任を取れますか?」 マキは目を見開いた。 「嘘…」 唯も顔を曇らせる。 「あなたが心配することじゃないわ」 「でも男と女って、親しく会話しただけでその気になることもあるのに、裸見られて触られて、その気になっちゃったら、独り占めしたいって思わないですかね?」 唯はいい加減に答えた。 「みんな大人だから、思わないわよそんなこと」 「言いきれますか?」 (しつこい!) マキがやきもきした。友情が芽生えたのか、もう喋るなと必死に信号を送ろうとしている。 (おまえはMか?) マキから見たら、わざと店長を怒らせようとしているようにしか見えない。 「れおんチャンはまだ経験乏しいから」 「バカにしないでください」 「大人なの。じゃあ、こういう攻撃も平気でしょ?」 「あん…」 唯の手がいちばん敏感なところをまさぐる。 「やめてください、関係ないじゃないですかあ…あ、待って」 れおんが急に弱気の表情。 「はあ、はう、そんな、やめて」 赤い顔で腰をくねらせている。マキは真剣な顔でれおんの様子を見ていた。 「あん…やめてえ!」 れおんは両目を閉じて歯を食いしばっている。 「くううう…」 店長は真顔で攻め続ける。本気だ。まずい。 れおんが慌てふためく。 「あん…やめて、やめて、やめて」 「店長!」 怒ったようなマキの声に、唯の手が止まった。振り向く店長にマキは慌てた。 「すいません」 唯は、ぐったりしているれおんを見た。 「耳が痛いこと言うわね。わかったわ。検討してみる」 「え?」 れおんが目を開けたとき、唯はすでにドアへ向かって歩いていた。 「あとはよろしくね」 「はい」 マキはゆっくり近づくと、れおんの手足をほどいた。 「マキちゃんありがとう。助けてくれて」 「バカね。イカされちゃったら洒落にならないでしょ」 玄関では、マキだけがれおんを見送る。 「れおんチャンにマッサージしたかったな」 「遠慮しとくわ」 「なぜよ」 「ふふん」 れおんは店を出た。振り向いて店を見た。 「あたしの、知らない世界…」 前へ |次へ |
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