《MUMEI》
朝倉 奈都視点
「ね〜、奈都、本当に行かないの?」

「行かない、興味無い」

「も〜、奈都は本当にクールなんだから〜」


『クール』『大人っぽい』『美人』


それが私の周りからの印象だった。


「あ〜! もう!また外れた」


誰もいない第二体育館に響き渡る、バスケットボールが跳ねる音と、盛大な独り言。


こんな姿を見たら、周囲はびっくりするだろう。


(て、誰も来ないのわかってるからやってるんだけどね)


知り合いは皆、演劇部の劇がある第一体育館に行っているのだ。


(あの嫌味な双子の片割れに会いたく無いし)


私の放ったシュートは、また外れた。


「あ〜も〜ムカつく!」


『どっちが厳だかわからないの?』


(わかるわけないじゃない! 一卵性双子なんだから!)


普通はわからないはずだ。


だから、私は普通だ。


なのに、後から来た厳が言った。


それまで、デレデレと鼻の下を伸ばしていたのに、急に真面目な顔で。


『美鈴とくるみはわかったんだよ』


そして、厳は私に興味を示さなくなった。


私は双子が好きだったわけではないが、プライドは傷付けられた。


(どうしたら、双子に復讐できる?)

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