貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
敵。
アキの提案に甘えさせてもらうことを決めたのはいいけど、荷物を取りに家に帰らなきゃならないと思った瞬間、ドッと鬱の波が押し寄せた。


「コソコソしちゃダメだ。一旦、堂々と玄関から入ればいい」

「うん」

「そこで説教が待ってるなら、黙って耐える。いい?」

「…うん」

「荷物は最小限に。通帳とか、そのバッグに収まるくらいのものしか持たないこと」

「ふ…、服は?」

「服、買う金ないの?」

「あんまり」



アキがいつものクールな笑みを浮かべた。


「なんとかなるって♪」

わたしはこの自信満々なアキに弱い。
初めて会った時から吸い込まれっ放しみたいに。






頭の中で十分にシミュレーションをして、一人で席を立つ。

「行って来る。ここで待っててね」


「来るまで待ってる。何日かかってもちゃんと来るんだよ」



「大丈夫、今日中に来る」

わたしは自分の発言に随分自信を持てる様になった。
やっぱりアキがわたしを変えてくれてるんだ、と思う。






あんな家には、もう帰らない。

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