《MUMEI》
十人十色
「ねぇ、友香って柳田くんと一年の時から同じクラスだったよね?」
二年C組で一番の美人である真由子が声を掛けてきた。彼女とは親友とまではいかないが、それなりに気が合う友達だ。
「そうだけど。どうかした?」
「柳田君、休み時間どこ行ってるか知らないかなぁって。」
そうなのだ。この柳田という男は、いつも休み時間になると必ず居なくなる。気付いたら居なくなり、チャイムが鳴るギリギリでフラリと戻ってくる。それは一年の時から変わらずで、だが私も彼がどこに行っているのか知らなかった。
「さぁ?私もナゾなんだよね…」
「そっかぁ。残念…」
真由子はガッカリといった様子で肩を落とした。
「ゴメンね。でもなんで?」
「う〜ん…誰にも言わない?」
真由子は少し小声で話しだした。
「うん、言わない!」
私は、秘密事は絶対他言しない。ただそういう内緒話っていうのが大好きで、ワクワクした。
「私ね……」
「ウッソ!!マジで?」
「シィっ!」
「ゴメンっ」
びっくりしてつい声が大きくなった。
「絶対秘密だからねっ!」「う…うん。」
まさかこんな美人さんが柳田を好きになるとはねぇ…
私はまだ戻って来ていない柳田の席と、自分の席へと戻っていく真由子の後ろ姿を交互に見た。
世の中、人の好みも十人十色だな…
私は今日それを痛感した。
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