《MUMEI》

「ハイ‥姫サマ‥」

「──ちょっと待ってて」

「ぇ」

「氷枕取り替えてあげる」





那加は冷蔵庫から、

予備の氷枕を取り出すと──

温くなった方の氷枕と取り替えてくれた。





「冷たい?」

「──ぁぁ」





冷たくて気持ちいい。





「日向、風邪引くと絶対熱出してたよね」

「ぇ」

「今でも変わらないね──」

「那加‥?」





母親みたいな優しい目差しに、

俺は不思議な気持ちがした。





「熱高いくせに、あたしがお見舞いに行くと『心配しないで』ってそればっかり」





苦笑しながら、

那加は懐かしそうに言った。

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