《MUMEI》
屋上
いつもは混み合う購買だが、今日はタイミングがいいのか意外にすんなりパンが買えた。
大好きな焼きそばパンが買えて、気分上々で教室に戻ろうとしたが、春のポカポカ陽気が気持ち良さそうで…
今日は外で食べたい!!

そんな衝動に駆られた。
友達の多い真由子の事だ。今頃、他の子と昼食を済ませているだろう。私はそう考えてクルリと方向転換した。

目指すは屋上。
この前誰かがいるのが見えたから、もしかしたら今日も鍵が開いているかも。
初めて屋上に行くからなんだか変に緊張する。

ラッキー★!!

扉に掛かっているはずの鍵は、やはり予想通り開いていた。

―ガチャ…―

開けた瞬間、眩しい太陽光線が私に降り注ぎ、思わず目を塞ぐ。
「うわっ!眩しい…」
地面が白いから、余計眩しさが増しているのだろう。光に慣れる様、ゆっくり目を開けながら外に出た。

あれ?あいつは……

うっすらと開けた目に映ったのは、一人の男子生徒。ヒョロっとした体型になかりの長身。
脚を組みながら上向きで寝ている。
アイマスクで顔半分は隠れていたが、大体誰だかわかった。二年間同じクラスなのだ、分からない訳がない。

柳田準平だった。

あいつ、何してんの?
寝てんのかな…?

別に放っておいてもいいのだが、もし気分悪かったりとかしてたら…
そんな不安がよぎって、そっと柳田に近寄っていった。
スー…スー…

気持ちよさ気な寝息が聞こえる。

何だ…ほんとに寝てただけなんだ。

私はホッとして、起こさないように別の場所に行こうとした。
その時だ。
「だれ…?」
寝ているはずの柳田に急に声を掛けられた。
「うわっ!!」
突然の事でかなり驚いた。「ゴ、ゴメンッ!!起こしちゃった?」
「いや…もう起きてたから…」
柳田はアイマスクを外しながら
ムックリと起きてきた。
「あぁ…吉野さんか…」
眩しそうに細めた目を擦りながら、柳田はあくびをした。

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