《MUMEI》 「──先生」 「‥ぇ」 急に‥卯月が話しかけてきた。 「ど、どないしたん‥?」 「私、‥私──‥」 「卯月‥?」 「ゃ、やっぱり‥何でもないです」 「──ちょい待ち」 オレは思わず、卯月の肩を掴んどった。 卯月は‥少し涙目になっとる。 「‥先‥生‥?」 「何かあるんやないか?」 「‥ない、って‥言ってるじゃないですか‥」 そう言うた卯月の目は、涙が溜まって零れそうになっとった。 慌てて肩から手を放した。 「すまん‥つい力入って‥」 オレが言い終わらへん内に‥卯月は教室から飛び出して行ってもうた。 前へ |次へ |
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