《MUMEI》
開幕
『同じ日の夕方、元武家の藤宮家に、かなり元気な赤ん坊が生まれました。

その子供の名前も

静と名付けられました』


ここで、今度は志貴の両親役の声が入る。


藤宮父『元気な男の子だな』

藤宮母『い、いえ、それが…』


数秒の沈黙の後、坂井が口を開く。


『そうして、藤宮静は、周囲の予想以上に元気に成長しました。


これから始まるのは


同じ誕生日


同じ名前


それから、お互い変わった環境で育った


二人の静の恋物語です』


坂井のナレーションが終わり


舞台の幕が上がった。


最初のシーンは姫宮家の居間で


ステージには、俺を中心に


執事役の頼


母親役の部長


父親役の先輩がいた。


(よし)


俺は息を大きく吸い込んで、最初のセリフを口にした。


『夜会なんて行きたくない!』


…後で聞いたが、女装した俺を本気で女だと勘違いした観客が意外と多かったらしく


俺の低音ボイスに観客は唖然としたようだ。


そんな不機嫌な静に、母親が口を開く。


『そんなに怒っては可愛い顔が台無しですよ。せっかく可愛く育ったのに』


部長は今日も薫子さんスマイルだった。

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