《MUMEI》
無機質な男
「私の名前、知ってたんだ。」
柳田は何に対しても無関心そうで、私の知る限り表情すら余り変わらない。
無関心で無表情。いつも物静かなこの男を一言で言うなら、そうだな…
『無機質』だ。
そんな男が私の名前を知っていた事に少し驚いた。
「そりゃ…二年間同じクラスだし、覚えるよ。」
「そ、そうだよねっ…」
伸びをしながらマイペースに喋る柳田に、少し居心地の悪さを感じる。
私は得に人見知りしない方だが、柳田とは殆ど会話を交わした事がなく、それゆえこの男の空気が読めなかったのだ。
沈黙が気まずくて、何か会話がないかと頭をフル回転させた。

そうだ!!

「ね、ねぇ…なんで四限目来なかったの?」
「四限目…あれ?今何時?」

質問返しかい!!

「12時…45分だけど?」
私は持っていた携帯で確認した。
「うわ…寝過ごした。」
「寝過ごしたって…」

どこまでのんびり屋だよ!
「あれ?何処行くの?」
立ち上がり、屋上を出て行こうとする柳田をつい引き止めてしまった。
「購買。腹減ったから。」「この時間、もうご飯売切れちゃってるよ?」
「マジかよ…」
「……そうだ!」
溜息を着く柳田が可哀相に思えて、私は閃いた。
「私、パン二個買ったから一個あげるよ!」
私は持っていた袋を広げて柳田に見せた。
中身は焼きそばパンとメロンパン。
「ありがと…」
柳田は棒読みのような礼を言うと中からパンを取り出した。

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