《MUMEI》
姫宮家サイド
『この歳まで可愛いとは…』


父親役の、普通よりやや地味な先輩が呟いた。


姫宮家は、母親がとにかく強い。


(部長、ハマり過ぎだよな)


不機嫌な静に構わず話を進めていく母親だった。


『大丈夫ですよ、静様。私もお供致しますから』

『ありがとう、伊月(いつき)』


俺は、執事役の頼に笑顔を向けた。


執事の伊月は、静が姫宮家で最も信頼する人物だ。


(しかし、慣れないな)


黒髪黒目・プラス眼鏡の頼は、違和感ありまくりだった。


ちなみに、眼鏡はこの後頼が演じる間宮男爵との違いを出す為の物だった。


そして、嫌々出た夜会で、俺は志貴と


藤宮静と初めて出会う。


『男』に


『同性』にときめき、動揺する静。


その後


たまたま外出中にまた、『藤宮様』に会ってしまい


運命を感じ、更にときめく。


『もしかして、俺、心まで女になってしまったのか?』


俺は、この事だけは誰にも相談出来ずに


一人で悩み続ける。


完全に恋する乙女状態の姫宮静だった。

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