《MUMEI》

それきりその話題は終わりにしてしまって、ようやく依頼の話に戻ることになった。何やら気まずい雰囲気になってしまったが、切り換えの速さもヴァンのヴァンたる所以だ。

「……それで、魔獣だったな。そいつについて分かることを教えろ。」

さすがに故郷の一大事であるからかディンは真面目に語り出す。

「ああ……毎回何故か砂嵐と共にやってくるせいで姿はちゃんとは分からないが、取り敢えず四足歩行の魔獣ってのは確かだ。サイズはかなりでかくて、大きいのだと標準的な鉄騎一台分くらいはある。」

「他に分かることはあるか?」

いくら何でも情報が少な過ぎる為さすがのヴァンでも判断がつかない。再びディンに尋ねる。

「後は……そうだな、砂嵐が発生する直前に『ワオーーーーン』って吠えるんだ。多分ヤツら犬か何かの魔獣だと思う。」

ディンの読みは大体当たりだろう。おそらくその魔獣は狼だ。狼が魔獣化すると馬と同等のサイズになり、強い個体であれば鉄騎ほどのサイズにもなる。

しかし解せないのは砂嵐だった。獣が魔獣化したからといって特殊な力が身に付いたりすることはない。だというのにディンの話を聞く限りその狼が砂嵐を引き起こしているような話ではないか。

……どうやら、単純な魔獣退治の依頼にはならなそうだ……

何やら面倒なものが潜んでいそうな依頼に己の不調。ヴァンは思わず険しくなりかけた表情を無理矢理平静に保った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫