《MUMEI》
焼きそばパン
「あぁ!ソレ…」
柳田が取り出したのは、あろう事か、私の大好きな焼きそばパンの方だった。
「俺好物なの、コレ。」
「私も好きなの!!」
絶対取られまいと私はムキになって言った。
「メロンパンの方あげる!」
私はソレを取り出して交換しようとした。
「俺、甘いの苦手でさ。」「なっ…!?」
「メロンパン食えねんだよ。」
なんて奴!人の親切に我が儘を言うなんて!!
でも、話を持ち掛けたのは私のほうだしなぁ…
仕方ない…

「い、いいよ…あげる!」ここはグッと飲み込んで、気前よくあげる事にした。「サンキュ。」
それは一瞬だったが、ふと柳田の表情が和らいだ。

あ…こんな表情するんだ。
初めて見る柳田の笑顔にドキッとした。

「ところでさ、吉野さんここに何しに来たの?」
座り込みながら柳田が聞いてきた。

コイツから話し掛けてくるなんて…。

「空弁しようかなって…」「へぇ。でも屋上って立入禁止って知ってるだろ?」「そりゃまぁ…」
そうなのだ。ウチの高校は屋上立入禁止になっている。だから、今こうして二人が屋上に居ることは、本当は有り得ないのだか…
「って、ちょっと!だったらなんで柳田君もいるの?」
「ハハッ。今のノリツッコミ?」
柳田はさっきよりも明らかに笑った。
「何ボーっとしてんの?」
「え?あ…ううん。」
なんだか意外過ぎて私は呆気に取られていた。
「空弁しに来たんだろ?座れば?」
「うん…」
私は柳田の隣にストンと座った。

今日、私の柳田に対するイメージが180度変わった気がした。

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