《MUMEI》

「──那加‥」

「だから、早く戻ってあげて。──ね」

「ハイ」





帰り際、

佳代子さんにもう一度お礼を言って3階に向かった。





「‥?」





那加‥?





病室の前に、

華奢な少女の姿がある。





「那加──」





那加だ。





「遅いぞ日向っ」

「ス‥スイマセン‥」

「まぁ、今日は特別に許してあげるけど」

「ぇ」

「ほら、何ボケッとしてるのよ、早く入って」

「──ハイ」





那加──

今日は何だか優しいな。





優しいのは、

本当はいつもなんだけど、

今日は特に──。

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