《MUMEI》 下の階に足をつくと、頭上でガラスが割れるような音が響いた。 思わず上を見上げるが、すぐに織田に声をかけられた。 「何してる。さっさと来い」 「上にまだケンイチが」 ユウゴが言うと織田は「ああ」と頷いた。 「あいつは足止め役だ。すぐに追いつく」 織田は言うと梯子に手をかけて下へと降りる。 その後にユウゴは続きながら、初めて自分が四階の部屋にいたことがわかった。 二階のバルコニーに足をつき、ふと窓の方へ目をやる。 するとその部屋の中で若い母親が腕に赤ん坊を抱きながら目を丸くしてこちらを見ていた。 「何してる。こっちだ」 ユウゴは視線を織田に戻す。 彼は今度は梯子ではなく、隣のバルコニーに通じるついたてを蹴破り、開いた穴から向こうへと移動する。 ここがどういう構造になっているのかまるでわからないユウゴは黙って織田についていくことしかできない。 そのままさらに隣のバルコニーへ侵入した時、連続して銃声が聞こえてきた。 続いて爆発音、そして焦げ臭さが上から漂ってくる。 気のせいか、誰かの笑い声が聞こえる気がする。 「ほんとに平気なのか? あいつ」 ユウゴが聞くと、織田は「心配するな」とまるで気にしていない様子で言って隣のバルコニーへと移動する。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |