《MUMEI》
突然の宣言
それからというもの、私は柳田に会いに、時々屋上へ足を運ぶ様になった。
柳田とは毎日教室で会っているから、正確に言えば『私しか知らない柳田』だ。
いつもは見せない表情も感情も、ココでは見せてくれる。私はそれが嬉しかったのだ。ただ、まだこの気持ちが恋愛感情に繋がるかどうかは、分からないでいた。それが確信に繋がったのは、真由子の突然の一言だった。
「ねぇ…友香。」
放課後、真由子が深刻な面持ちで私の席に来た。
「何?どうしたの?」
余り見せない顔だったから鞄に教科書を詰めるのを止め、真由子の方に向き直った。
「私ね、柳田君に告白しようと思うの。」
「え…?」
ドキリとする。
「い、いつ…?」
「明日のお昼休みに。」
「休み時間いないじゃん」そう言った瞬間、真由子は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。
「それがね、わかったの!いつも何処行ってるのか」
何で?と思う。それは私しか知らない事だし、勿論私自身、他言などしていなかったのだから。

「A組の子がたまたま見たんだって!柳田君が屋上から出てくるところ!!」

成る程。さすがお顔が広い。良い情報網を持ってらっしゃる…

「だから私、明日勝負に出ようと思うの!」

勝負ってあなた…ギャンブル
じゃあるまいし。
いや、似た様なものか。

「応援してくれるよね?」「え!?あ…うん…。」

しまった!つい勢いに押されて『うん。』だなんて…
「ありがと〜。やっぱ持つべきモノは友だよねっ!じゃあ私これから塾あるから先帰るねっ。」
「あ…うん!バイバイッ!!」
かなり無理して笑顔を作っていた。

明日…か。
柳田は一体どんな反応をするのだろうか?断るだろうか?それとも…

私は既に帰ってしまっている柳田の席を見つめながらそんな事を考えていた。

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