《MUMEI》

「行ってみろて‥」




簡単に言いよるけど‥行く方は大変やねんで‥?





そない思いながら、教室の側まできた。





卯月は、独りで自分の席に座っとる。





「──卯月」

「ぇっ‥」





ビクッと肩を上げて、卯月が俺の方を見た。





「眞野‥先生‥?」

「‥驚かせてもうてごめんな、卯月‥」

「───────」

「ちょっと‥ええか‥?」

「ぇ」

「ぁ‥嫌やったら無理にとは言わん」

「──ぃぇ」

「ええんか‥?」

「──はい」





はっきりした返事やった。 





覚悟が決まった──そんな感じの声やった。

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