《MUMEI》
婚約・セクハラ
間宮と姫宮静が婚約したという話は、藤宮静の耳にも入った。


姫宮の家の事情は、以前から噂になっていたから、それが静が望んだものでは無い事も、すぐにわかった。


藤宮静『姫…』


藤宮静は、同じ名前の愛しい人を、『姫』と呼んでいた。


藤宮静『何も出来ない、女の私には、何も…』


婚約が発表され、結婚式当日になるまで、静は藤宮家の自室にこもる日々が続いた。


その間


姫宮静は、間宮家に頻繁に呼び出され、セクハラを受けていた。


(な、殴りたい…)


抱きついてくる頼を、俺は抵抗せずに受け入れなくてはならなかった。


(俺、すごく静の気持ちわかる…)


静は家の為に


俺は、劇の成功の為に


ひたすら、耐えていた。


唯一、救いだったのは時代が時代だからと、結婚式までそれほど激しいスキンシップが無かった事だった。


静『き、京介様、これ以上は、まだ…』


その為、頼が必要以上に暴走したら止めてもいいと俺は言われていた。


間宮『チッ…そうですね』


(今本気で舌打ちしたな、こいつ)


『チッ…』は台本には無いセリフだった。

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