《MUMEI》
頼のアドリブ
「仕方ないな、祐也は」


俺の後ろにいた頼が囁いた。


と、思った瞬間


「ギャー!!!」


姫宮静としてではなく、俺の本気の絶叫が体育館中に響き渡った。


「な、な、なな…」


俺は呆然として、頼を見上げた。


(こ、腰抜けた…)


間宮『見ての通り、貴方の姫は本当は男なんですよ』


頼が、アドリブのセリフを言った。


『見ての通り』


頼がそう言う通り、俺の着物の前は全開にはだけていて、平らな胸が見えていた。


『自分で着物を開いて、男だと伝える』


それが新しい台本だったのだが、俺はそれができなくて


結果、頼が無理矢理そうしたのだ。


藤宮静『姫が、…男』


ちなみに、今の志貴のセリフは台本通りだった。


(あ、次俺だ)


姫宮静『ごめんなさい…』


立ち上がれない俺は、そのままセリフを言った。


藤宮静『馬鹿みたいだ、私…』


そう言った志貴は笑って


シャツを脱ぎ捨てた。


志貴は、さらしを巻いていて


胸の谷間がはっきり見えていた。


(な、何かいけない物みた気分)


俺は顔が熱くなるのを感じた。

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