《MUMEI》
合唱コンクール
去年倒れて参加できなかった合唱コンクールには、今年は無事に参加できた。


…が、俺は昨日の精神的な疲れが残っていた。


「面倒…」


ポツリと呟くと


ギロ!


(怖っ)


クラスの視線が俺に集中した。


(たかが、おやつじゃん…)


合唱コンクールの景品は、お菓子だった。


ただ、各学年の一位に与えられるのは、高級菓子店の


期間限定のケーキだった。


これは、並んでもなかなか買えない逸品らしい。


続いて二位は、これも、それなりに有名な和菓子店のどら焼き


三位は、アイス


そして…最下位は





無し。


ちなみに、与えられたお菓子は、合唱コンクール後、教室に戻り、おやつとして食べる。


おやつの時間は、三十分。


無しのクラスは、その間飲まず食わずで、担任・副担任の雑談に付き合わなくてはならなかった。


「去年はアイスだったから、今年こそ一位目指すわよ!」

「おう!」


志貴の言葉に、皆の心は


俺以外、一つになった。


「祐也もいいわね?」

「は、はい!」


(やる気無いの、バレてた?)


俺も慌てて気合いを入れ、言われた通り笑顔を振り撒いた。

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