《MUMEI》

「‥‥‥よ‥っ」





幹にハシゴを立て掛けて、

足場が安定している事を確認して上り始めた。





「───────」





‥結構高い‥。





前に、

那加はこの桜の枝に登っていたけど‥

よく登れたな‥。





那加は昔から、

華奢で運動神経も良かった。





俺はというと‥

こういうのはあまり得意じゃない。





どちらかというと‥

苦手だ。





けど今は、

そんな事を言ってはいられない。





那加の帽子を、

取り戻さないと。





「‥‥‥よしっ」





──取った。





「ひなたぁ、帽子あったー?」

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