《MUMEI》 中間テスト「一日で五教科なんて酷すぎる…」 テスト終了後、そう愚痴り、ぐったりしていたのは 珍しく、拓磨だけだった。 「じゃ、俺デートだから!」 いつも一緒に落ち込んでいた守は、あっさりと席を立ち、教室から出て行った。 デートの相手は もちろん、吉野だ。 二人は、後夜祭で無事にリボンを交換した二人は、その日から付き合っていた。 ちなみに、拓磨の手首には、『もったいないから』と、未だに志貴からもらった赤いリボンが巻かれている。 真司に後から聞いた話だが、拓磨は今年初めて志貴とリボン交換をしたらしい。 (そういえば、去年、志貴は俺が好きだったんだよな) 去年の事なのに、ひどく昔のような気がした。 同時に、未だに旦那様の命日を強く意識する自分も、いる。 (やっぱり俺の一番は変わらないって事か) 「どうしたの、祐也?」 「ん? 何が?」 「辛そうな顔してる」 (志貴は時々鋭いな) 「明日の球技大会が憂鬱でさ」 俺は、笑いながら嘘をついた。 (球技大会が憂鬱なのは、本当だし) 志貴もそれ以上は質問して来なかった。 前へ |次へ |
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