《MUMEI》
何でも出来る志貴
試合の合間に、俺とサッカーのメンバーは、校庭でソフトボールをしている女子の応援に行った。


ソフトボールには、志貴が参加していた。


志貴は、バレーもバスケも得意だが、唯一部員がいないソフトボールに参加する事になったのだ。


そんな志貴の役割は、ピッチャーで、四番。


「スゲー」


絵に描いたようなヒーローポジションの上に、期待を裏切らない、大活躍。


拓磨を筆頭に、応援に盛り上がるメンバーをよそに、俺はただただ感心していた。


「化物だな」

「…頼?」


振り返ると、いつもより元気の無い頼が立っていた。


「どうした?」

「球技なんて、…最悪」


頼は俺と同じように、運動神経は悪くないが、球技は苦手というタイプだった。


しかも、頼と同じ顔の厳がバスケ部だからと、無理矢理バスケにされたらしく、かなり不機嫌だった。


その結果は、訊かなくてもわかるほどだった。


そんな、落ち込み気味な俺と頼の頭上を


志貴が打った白いボールが通り過ぎていった。


…ホームラン、だった。


「本当、化物」


頼が、空を仰いで呟いた。

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